白紙の国
ある国では、
人生は一冊のノートから始まると言われていた。
生まれた子どもには、
必ず真っ白な一冊が手渡される。
どのノートも真っ白だった。
表紙には、
たった一行だけ書かれている。
「好きなように使いなさい。」
それ以外の説明は、
何もなかった。
子どもたちは迷わなかった。
丸を描く子。
四角を描く子。
犬のような猫を描く子。
雨の日には濡れたページに指で絵を描き、
晴れの日には花びらを挟んだ。
失敗しても笑った。
ページを破ってしまっても、
次のページをめくればよかった。
ノートはすぐに汚れた。
でも、
その汚れは、
毎日を生きた証だった。
やがて大人になると、
国の空気が少しずつ変わり始めた。
誰が最初に言ったのかは、
誰も覚えていない。
「最初の一ページは慎重に。」
「きれいな字を書きなさい。」
「あとで後悔しないように。」
「失敗は、一生残る。」
その言葉は、
教えになり、
常識になり、
いつしかルールになった。
国中の人が、
ノートを開くたびに、
手を止めるようになった。
もっと良い言葉があるはず。
もっと良い絵が描けるはず。
もっと良い日が来るはず。
そう思っているうちに、
今日が昨日になり、
昨日が去年になっていった。
ある男も、
その一人だった。
机の上には、
真新しいノート。
何度も開いて、
何度も閉じる。
書こうとするたびに、
頭の中で誰かが言う。
「それ、本当に書く価値がある?」
「もっと良いものが書けるだろう。」
「まだ、その時じゃない。」
男は頷いた。
その声は、
いつも正しそうだった。
春が過ぎた。
夏が終わった。
秋が枯れ、
冬が積もった。
男は毎年、
「今年こそ書こう。」
と決めた。
そして毎年、
来年へ持ち越した。
ある日、
髪が真っ白になった男は、
静かに窓を開けた。
風が吹き、
ノートのページが勢いよくめくれた。
パラパラ、
パラパラ、
パラパラ。
最後のページまで、
音だけが走った。
どのページも、
真っ白だった。
男は、
その音を聞きながら、
少しだけ笑った。
「これだけきれいなら、
悪くない人生だったのかもしれない。」
その夜、
一人の老人が訪ねてきた。
老人は何も言わず、
ノートを受け取り、
最後までページをめくった。
そして、
静かに閉じた。
「きれいですね。」
男は少し誇らしげに頷いた。
「一度も失敗しませんでしたから。」
老人は、
少しだけ悲しそうな顔をして言った。
「ええ。」
「だから、一度も生きられなかったのですね。」
男は何かを言おうとした。
「あの日なら。」
「もう少し若ければ。」
「もっと時間があれば。」
言葉は、
喉まで来て、
一つも外へ出なかった。
書かなかった人生は、
最後まで、
書く言葉を持っていなかった。
翌朝、
男のノートは、
国の大きな図書館へ運ばれた。
「もっとも美しい白紙」
として、
ガラスケースに飾られた。
国中の人が、
その白さを褒めた。
誰一人として、
その中身について語る者はいなかった。
人は、
失敗したページばかりを覚えている。
けれど、
人生が本当に静かになるのは、
失敗した日ではない。
何も書かなかった日が、
何年も積み重なったときだ。
白紙は、
美しい。
でも、
人生は、
きれいに残すために渡されたものではない。
汚すために渡されたものだったのかもしれない🐽
ここまで読んでくださり、
ありがとうございました🐽✨
あなたの感想が、
次の物語を書くエネルギーになります。
コメントやスキをいただけたら、
僕は今日もブヒブヒ頑張れます🐷💪
また、別の物語でもお会いできたら嬉しいです🤝🌙



他人からみたら美しいもの
称賛されるものが
自分にとって、
見てほしかったもの、
価値のあるものかは分からない
目指していたものが
後になって、なんか違うな
なんてこともあるのかも
失敗は怖いししたくない
でも、綺麗なだけでも
何も残らないのかな
難しいよね、、、
生まれてから1ページづつ作りづづけたら、3万ページとかになるんですかね🤔
それだけの大作にはどんな内容がまっているんですかね?